D2Cブランド(EC・オンライン通販発) ポップアップストア動向
こんにちは。
現在、世界はコロナウイルスによって大きな変動期を迎えていますが皆様どの様にお過ごしでしょうか?
はじめまして。THE・STANDARDの友成です。
今回のコラムはリモートワークで在宅勤務されている方も大勢居られる現状の中、この嵐が去った後どの様な社会になっていくのか・・を私が書いたところで誰が読むのかというところですので(笑)、コロナショック前の小売業を取り巻く状況と、これからのポップアップストアについて書かせて頂こうと思います。
1.新しいビジネスモデルの到来(D2Cビジネス)
突然ですが、皆さん「D2C」という言葉を最近耳にする機会が増えたと感じませんか?
また訳のわからん略語か・・と思う人もいるかもしれませんが、ここ数年で一気に認知拡大してきたビジネスモデル、
と言えばピンとくる人もいるかもしれません。
D2C(DtoC、Direct to Consumer)は、メーカーなどが自社の商品を直接消費者に販売するビジネスモデルを指す用語です。
旧来のように、問屋や小売店などの流通ルートを経るのではなく、自社で企画・製造した商品を自社のネットショップ・ネット通販などを使って直接消費者へ販売するモデルのことですね。
同様に製造から販売までを一貫で行うビジネスモデルに「SPA(Speciality store retail of Private label Apparel)」がありますが、SPAが主に店舗を構えて販売を行うのに対して、D2Cではオンライン通販が主要な販売チャネルとなる場合が多いのが特徴です。
私自身はSPA業界の出身なのですが、元々問屋を通して小売店で販売する流れが10年ほど前にユニクロや無印良品の成功パターンを契機に、多くのメーカーがSPAビジネスに移行した時代をまさにその最前線で実感した一人です。
問屋や卸などの流通コストを下げてメーカーが直接お客様に販売まで行うことで低価格・高品質な商品を販売でき、利益も確保できるこのビジネスモデルは2010年代に急速に広がり、全国のショッピングモールの出店ラッシュもあいまって日本全国どこでも同じ商品が同じ価格で買える時代が到来しました。
ただこのビジネスモデルもスマートフォンの普及によって次第に勢いを失っていきます。同じ様な商品ばかりが全国のお店に並ぶ様になり、価格競争の時代が始まります。多くの人に買ってもらう前提のSPAビジネスは、スマホで最も安く買える場所が見つかる時代では利益確保が難しくなってきています。
そこで注目されてきているのがD2Cブランドです。
価格競争合戦では大手企業に太刀打ちできない中で、スタートアップ企業が独自の世界観をもってユニークな体験を生み出せる商品を作り、D2Cというマーケティングで一矢報いることが可能になってきています。
2.D2Cブランドが店舗出店を目指す訳
約6%
アパレルや雑貨業界の人ならご存知かもしれませんがこの数字は日本の小売り業界全体のEC割合です。(2018年時点)
※アメリカは10%以上
毎年どんどん比率が上がってきているとは言え、実際のところ日本はまだまだ実店舗で商品を販売することが主流です。
だからこそ2020年の現在は多くのブランドがEC販売の比率を高めて売上を上げようと模索しています。
実際先に挙げた様にD2Cブランドも含め日本はEC・ネット通販 販売への移行真っ最中と言えるでしょう。
では、日本の小売業はこれからほぼEC販売になっていくのでしょうか?
ここで、世界に目を向けてみます。
EC販売のシェアが15%を超える勢いのアメリカでは、当然ながらD2Cブランドも既に社会に認知されてきています。
そういった所謂成功したD2Cブランドがこぞって実店舗を出店しているのをご存知でしょうか?
当たり前ですが、WEBではできない事が実店舗では可能です。
実際に商品に触れてみて自分はこれが本当に欲しいか吟味する。
実際の商品を自分の目で見て選ぶ。
これだけEC ECと言われていてもお客さんの中には無意識的体験価値を求めています。
もちろん、例えば本など、質感ではなく中の情報を求めて購入するものや元々商品を知っている商品を購入する場合はECでも問題ないとは思いますが。
D2Cブランドが主に手がけるニッチな商品こそ実際に見て触って、更にブランドの作り手との会話を通して商品をより良く知るのはやはり「実店舗」である事が重要な事なのです。
また、それ以外にも『商業施設で実際に販売している』これはお客様にとって信頼につながるポイントとなります。
実に日本的な考え方ですが、これは事実です。
フラッグシップストア(旗艦店)出店か、
ポップアップストア (期間限定ショップ)出店か
実店舗の出店で手に入ることはどんなものでしょう?
EC上と違い、お客様と直に接する店舗では以下のことが主に可能です。
・売上獲得
・顧客獲得
・ブランド認知向上
・マーケットリサーチ
店舗出店は固定費(家賃・人件費)が常にかかりますので、売上の利益で固定費を上回らないと店舗は存続できません。
ただし、D2Cブランドの様にEC上に利益を持っている場合、店舗の目的(KPI)を売上以外に設定し、ECサイトへの更なる誘導やブランド認知向上に繋げているブランドが増えてきています。
3.フラッグシップストア(旗艦店)の出店について
https://www.fashionsnap.com/article/2020-01-09/allbirds-open/
fashionsnap.com
EC発のD2Cブランドが店舗を出店する場合に目指すべき「旗艦店」がフラッグシップストアです。
ブランドの成長に合わせて、お客様にオンライン上だけではなく、実際に商品を見て触れて体験する場所としてブランドの象徴となる様な店舗になります。
-そのブランドの全てが存在し、ブランドのコンセプトや世界観を体現した空間-
伝えたいメッセージが集約され、常にブランドの最新の情報を発信し提案でき、
一貫したコンセプトを空間でも表現できる店舗、最高ですね。
フラッグシップストアには特に決まりはありません。
旗艦店というと都内一等地の大型店舗を想像してしまうかもしれませんが、例え5坪以下の郊外店舗であってもブランドの核となる店舗であればそれは立派なフラッグシップストアと言えます。
大切なのは、EC上やSNS上の所謂オンライン上でできない取り組みを店舗で行うことができているか、に尽きます。
伝えたいメッセージを持った店舗にファンが集まり、新しいコミュニティを作り上げていった先にブランドの成長の新たなステージが開かれていきます。
弊社ではD2Cブランドに向けたフラッグシップストア出店に向けた勉強会を実施しています。興味のある方はぜひご参加ください。
D2Cブランド様必見 フラッグシップストア勉強会
http://dev.t-standard.jp/2020/03/04/event-002/
4.D2Cブランドのポップアップ集合体事例(Re:store)
フラッグシップストアを目指すべきと言いましたが、もちろん乗り越えなければいけない壁も数多くあります。
まず、圧倒的に資金の問題です。更にスタッフやその運営、店舗への集客など少人数の会社ではすぐにパンクしてしまう危険性もあります。
そういった時に考えらるのがポップアップストア(期間限定店舗)の出店です。
最大の特徴は店舗を構えるほど費用はかからない+商業施設内での催事であれば一定数の集客も見込めることです。
ポップアップストアの利点については弊社サイトに数多くの事例・コラムがありますのでぜひ参考にしてみてください。
ただし、D2Cブランドは小規模マーケットから立ち上げた会社が多く、ポップアップストア出店に関してでも資金面や運営面でのリスクを取ることが難しいブランド様がほとんどです。
EC上の販売ではある一定の売上利益が出せていても、実際店舗を出店するのは大きなリスクと引き換えになります。
こうした問題を一気に解決するポップアップストアが最近新しく生まれてきています。
D2Cブランドを一か所に集めた「集合型」のポップアップストアです。
【海外の集合型ポップアップ】
ここで実際海外のD2Cブランドによるポップアップストア集合体の事例を見ていきましょう。
ECが主戦場のD2Cブランドにとって、何より多くの人の目に触れる場所で費用を抑えて出店したいのが本音。
このニーズを受けて誕生した店舗です。
https://www.visitrestore.com
Re:store(リストア)
2019年8月、実店舗を持たないD2Cブランドだけを集めたセレクトショップ「Re:store」が
サンフランシスコに登場しました。
実店舗を持たないニッチなブランドを顧客に近づけるという目的のもと、全70ブランド、1000以上もの商品を取り扱っています。
取り扱いジャンルは、ファッション、化粧品、アクセサリー、健康、テクノロジー、食品、ホームブランドと幅広いです。
出店ブランドには、ロンドンのファッションブランド「House of sunny(ハウスオブサニー)」や、H&Mから生まれたアパレルブランド「& Other Stories(アンドアザーストーリーズ)」、パリ生まれのアパレルブランド「Sezane(セザンヌ)」、発展途上国の生産者を支援するジュエリーブランド「SOKO(ソコ)」などInstagramで人気のブランドが揃っています。
従来の卸売モデルの代わりに、毎月20%の販売手数料と出店費用350ドル(日本円で約38000円)を支払うビジネスモデルを採用しています。
ブランド側にとって、市場価値の高いサンフランシスコでの出店は高い家賃を払わなければいけないという難点がありましたが、このビジネスモデルによって気軽に出店できるようになっています。また、敷地内にはコミュニティワークスペースがあり、ブランドの世界観や商品詳細を伝えたりと仕事や顧客と交流できる仕組みになっているのも特徴。
出店待ちのブランドは2000を超えるなど、今注目の店舗です。
【国内集合型ポップアップ事例】
本場アメリカ程の規模ではありませんが、日本にも同様のコンセプトで展開しているポップアップストア事例があります。
246st MARKET(ニイヨンロク ストリートマーケット)
大手アパレルの株式会社ワールドが、D2Cブランドを集めたポップアップ型百貨店「246st MARKET」を2019年9月に期間限定で開催。
今年5月末からは横浜で第二回目の開催を予定しています。
https://www.246stmarket.com
Image Credit : 246st MARKET
246ストリートマーケットは、作り手と買い手を繋ぎ、ブランドを設立したばかりの若手デザイナーに必要なサービスを提供する場所として造られました。
コンセプトはサステナビリティで、環境への負担とコストを抑えた商品を販売。店内のインテリアも、再利用可能な素材を用いて制作されました。また、デザイナーのトークショーやライブイベントにより、商品を販売するだけでなく若手クリエーターの想いが詰まった空間を演出しています。
出店ブランドは、全13ブランド。日本の伝統技術を取り入れ、サステナブルなジュエリーを販売する「matlor®(マトラー)」や、サイズとデザインの完全オーダーメイドのハイヒールブランド「gauge(ゲージ)」、折形礼法からインスピレーションされた結婚指輪と小冊のセットを販売している「iwaigami(イワイガミ)」など。
D2Cブランドらしく顧客の細かなニーズに応え、世界観を確立しているものが多く集められていた印象です。
第二回の横浜の出店ブランドが今から楽しみですね。
この時代にあった素晴らしいビジネスだと思います。
5.今だから出来る店舗の出し方を考えよう
上記「Re:store」と「246st MARKET」に求められているもの、
それは出店のハードルが劇的に低い、シェアストアの考え方です。
先に挙げたSPA企業が一括で行っていた店舗を小さく、集合することでコストを抑えつつ、効果的なPRも図ることが可能になります。
D2CブランドなどのECを前提に小さくスタートしたブランドなどに新たな可能性が拓けて、多様なクリエイションが育まれる土壌が出来れば、これほど最高な事はないと思われます。
これからのD2Cブランド向けポップアップショップ
2020年3月現在、コロナショックが世界中を襲い、小売業は大きな影響を受けています。この後どの様な世界になっていくのは誰にもわかりませんが、私個人では途上国での生産・経済成長に乗っ取った消費を前提にしたSPAのビジネスから本当に必要な人たちに向けたニッチな市場が今後の小売業界の新たな柱になっていくと予想しています。
スマートフォンで何でも購入できる時代だからこそ、消費者は本当に自分が欲しいものを見つける事ができます。本当に欲しい商品を実際手に取って確かめてみたい、見比べてみたいというニーズは無くなることはないと思います。
コロナショックを乗り越えて、新しい価値と商品を生み出していく→D2Cブランドに向けて
これから更に市場を拡大させたいD2Cブランドの各社に向けて、弊社でもポップアップストア のパッケージ化を計画しています。
場所は都内のサーキュレーションの高い施設で1社〜複数社合同で出店することでリスクとコストを最小限に抑えることができ、売上はもちろんテストマーケティング、顧客獲得など今までにないポップアップストアを作っていきましょう。一緒にこれからのブランドストーリーを作っていければと思っています。
結局具体的にどれくらい費用がかかるの?や実際どんな場所で出店できるの?などのご質問がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせいただき、実施したい内容や目的をお聞かせください。弊社ではポップアップストアに関する相談会も行なっておりますのでこちらへのご参加もご検討くださいませ。
友成崇嘉TAKAYOSHI TOMONARI
プロデューサー
株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーションから株式会社チチカカに出向し営業本部にて新規出店業務に従事。 国内・海外含め合計100店舗以上の出店を担当、その後新規事業立ち上げの責任者として 「日本のものづくり」をテーマにした新ブランドの立ち上げを担当。 ブランドストーリーの作成やローンチに纏わる。 その後、ヴィレッジヴァンガード営業本部にて全国200箇所を越えるポップアップストアを立ち上げ、出店・運営業務に従事。 2019年よりTHE・STANDARDに参画。 プロデューサーとしてポップアップストア の企画、運営に携わる。